嫌韓の情報ソースは韓国の新聞の日本語版サイトという皮肉
現在のマスメディアにおける嫌韓ブームを引っ張っている書き手に室谷克実という人がいる。去年『悪韓論』と『呆韓論』という新書を出して、何十万部というベストセラーになった人だ。
駅のキヨスクなどで、嫌韓の見出しを大々的にぶら下げている「夕刊フジ」という新聞があるけれど、その夕刊フジに重用されているのが、室谷克実氏だったりする。
『悪韓論』のほうは、僕も買って読んだ。
この本は、日韓関係について論じたものというよりは、韓国社会そのものについて、歪んだ学歴社会であるとか、格差社会であるとか、売春が盛んだとかいうことを書いた本だったけれど、僕にとっては全部、どこかで読んだことのあるような話だった。
それもそのはず、この本の主張の根拠になっている情報は、だいたいが中央日報、朝鮮日報、東亜日報、聯合ニュースといった韓国の新聞記事であり、しかも、これらはみな日本語版サイトに力を入れているメディアだ。
自分の情報ソースをいちいち明記するという著者の几帳面さは良いのだが、要するにこの人は、中央日報などの情報をまとめて一冊の新書に仕立て上げただけで、日々2ちゃんねるなどで韓国情報を浴びている嫌韓派は「このぐらいの本なら俺でも書けたけど……」と思っただろう。
日本のネット右翼が韓国に対して偏ったイメージを持っているとして、そのような偏見を育ててきたのは、日本のメディアではなく、韓国の新聞メディアの日本語版なのである、という事実は、日本でも韓国でも、もっと指摘されてもいいと思う。
中央日報も朝鮮日報も、日本語版サイトで、韓国の恥部とも言えるような(それこそ売春問題のような)記事も積極的に翻訳公開していて、その姿勢はむしろ立派なものである。しかし、日韓関係についての記事を読むと、僕でもため息が出てしまうことも多い。
両紙を読み比べてみると、東日本大震災での「日本沈没」報道や、「原爆は天罰」の記事などで有名な中央日報の反日記事のほうがより酷いし、しばしば記者の知性を疑わせるものもある。
そういう記事を中央日報が載せると、その記事が2ちゃんねるに転載されて、それに反応したネットの人たちが憤激するということの繰り返しである。
最近まで、日本のマスメディアは、韓国について偏った悪意のある情報を流したりはしなかった。むしろ韓流ブームでポジティブな情報ばかり流した。
韓国についてのネガティブな情報は、ネットメディアによって拡がったわけだが、それは実際には、2ちゃんねるだけでやったことではなく、韓国の新聞の日本語版サイトとの合作によるものだったのである、という事実は、嫌韓派なら誰でも自覚しているはずなのだが、嫌韓を批判する人たちはそれをあまり知らない。
自分たちがどれだけ日本の嫌韓感情を増幅させているかということを、中央日報などがもう少し知ってくれたらいいのにと思う。記事を書くときに「これを読む人が日本にもいるんだ」ということを少しでも考えてくれたら。
そして同じことは、日本メディアの嫌韓記事にも言える。
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(3月22日追記)
翌々日のエントリーもどうぞ。↓
韓国の新聞を読んだら韓国が分かるか〜黒田勝弘『韓国 反日感情の正体』 - 青空研究室
これまでに書いた韓国関連エントリーのまとめリンクも作りました。↓