青空研究室

三ツ野陽介ブログ

良い小論文、悪い小論文(1)

韓国では作文も教えたけど 四月からある大学で非常勤講師をやるのだが、それだけでは収入低すぎるだろということで、知り合いが起業して軌道に乗せている予備校で、お世話になることになりそうである。 それで、どの科目を担当したいかという話になって、最…

インターネットにおける実名の問題

僕が実名で書ける理由 10年か、それ以上前の僕は、「いまの自分はこんなんだけど、将来まったく違う人間に生まれ変わって、この自分を恥ずかしく思うときが来るかもしれない」という感覚を持って生きていた。 例えば、10年かそれ以上前の自分と言えば、モー…

統一国家の正統性について〜韓国と日本の場合

朝鮮半島分断の責任はどこの国にあるか 韓国の人たちが抱く、日本に対する忸怩たる思いのなかには、「なぜ韓国が分断されて、日本が分断されなかったのか」というものがあるらしい。 確かに、もう一つの敗戦国であるドイツは東西に分断されたのだから、日本…

恋する相手を自由に選ぶなんてできるのだろうか

「へえ、何を研究なさってるんですか」と初対面の人などに聞かれて、「テツガクです」と答えるのがいつも恥ずかしいのだが、「哲学?どんな?」と掘り下げられて、「ええ、まあ、自由について、とかですね」と答えるのも、さらなる羞恥プレイである。 「倫理…

運命とは自由を諦めることなのか

自由とは「そうしないこともできたはずだ」という後悔のことである。 中島義道さんの『後悔と自責の哲学』という本に出てくる、そんな考えについて前回、紹介した(自由とは後悔のことなのか〜中島義道『後悔と自責の哲学』 - 青空研究室)。 では、その後悔…

自由とは後悔のことなのか〜中島義道『後悔と自責の哲学』

「選択可能性と道徳的責任」と『後悔と自責の哲学』 前回の記事(こんな僕でも訳者になれた )では、『自由と行為の哲学』と題された共訳書のなかで、フランクファートという哲学者の「選択可能性と道徳的責任」という論文を翻訳したことがあるんですよ、と…

こんな僕でも訳者になれた

『自由と行為の哲学』について こんな僕にも、研究者らしく、訳書というものがあった。 『自由と行為の哲学』という本がそれである。もう四年前になるのか。 自由と行為の哲学 (現代哲学への招待Anthology) 作者: P.F.ストローソン,ピーター・ヴァンインワー…

知性の種類と馬鹿の種類〜コンサルタント的知性について(2)

前のエントリー(誰が世の中のことを一番分かっているのか〜コンサルタント的知性について)は、問題提起しただけで終わってしまった。 なるべく1500字ぐらいに記事を収めようとしているのと、23時59分までに毎日更新というのを心がけているので、中途半端な…

誰が世の中のことを一番分かっているのか〜コンサルタント的知性について(1)

文芸批評の時代 「かつて文芸評論家が担っていたような役割を、今は社会学者が担うようになった」ということが、よく言われた時期があった。十年ぐらい前の話である。 まあ、ほとんどの人の耳にはそんな声は入ってこなかっただろうが、僕が読んでいたような…

K-POPにも桜ソングはある〜BUSKER BUSKER『桜エンディング』(버스커 버스커 "벚꽃 엔딩" )

去年まで二年間韓国にいたので、日本の桜を見るのは三年ぶりになる。 韓国にもたくさん桜の木があり、花見をする人たちもたくさんいることは、ソウルにいたとき、当時のブログで紹介した(【動画】ソウルの桜の名所へ行ってきました | 旧 青空研究室 跡地)…

僕がイケダハヤトさんを尊敬してる件〜イケダハヤト『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』

僕ぐらいの年齢になると、自分より年下の物書きが華々しく活躍するといったことも、いちいち嫉妬してたら身が持たないほどあるわけだが、年下の評論系の人のなかで僕がいちばんリスペクトしているのは、イケダハヤトさんである。 僕が最近ブログを毎日更新し…

遅刻しそうな曲がり角で転校生とぶつかったら、なぜ運命になるのか

いわゆるお約束 「やばいっ!遅刻しちゃうっ!」と、食パンくわえて飛び出した女の子が、曲がり角で同じ学校の制服を着た男の子と激突する。ドスン! 「いってえな!何すんだよ!」と怒鳴られた。朝からついてない。見たことない顔だったけど、うちの生徒だ…

これからの「謝罪」の話をしよう〜前の世代の過ちについて

国家は歴史上の過ちを謝罪すべきだろうか ハーバード大学マイケル・サンデル先生の『これからの「正義」の話をしよう』は、日本では何十万部も売れたそうだが、そこまで読みやすい本でもないから、最後まで読み通した人は、そんなに多くはなかろうと思う。 …

ブログを毎日更新する意味〜お風呂のときもデートのときもブログのことを考える

STAP細胞小保方さんによる様々なハッタリのなかにも、「でもあれは本当だったんじゃないかなあ」と思えるものもあって、それは「お風呂のときもデートのときも研究のことを考えてました」という発言である。あれは本当だったと思いたい。 小保方さんがそう言…

ブログ放置してた僕が二週間連続更新して分かったこと

放置していたブログを突然、毎日更新し始めて二週間経った。 ブログを毎日更新したら、何か自分の人生が変わるんじゃないかと淡い期待を持っているのは事実なのだが、二週間(正確には昨日まで13日)ぐらいでは何も起こらない。 しかし、リアルを充実させる…

道徳的運の問題

STAP細胞が存在していれば小保方さんの研究不正は許されたのか。 革命がうまく行けばそのプロセスで人命を犠牲にしても許されるのか。 98年のワールドカップで岡田監督が勝っていればカズ、三浦カズを外したことは責められなかったのか。 昨日のエントリーで…

結果に対する道徳的な責任〜例えばカズを外した岡田監督と俊輔を外した岡田監督

STAP細胞が存在すれば許されたのか 小保方さん騒動に関して、 「STAP細胞が本当に存在するのかどうかが重要であって、論文での不正など些細なことではないか」 という意見の人が結構いる。 ああ、そういう考え方をする人も多いんだなあと思った。 それは、も…

評価経済社会は専制的か〜『黒子のバスケ』脅迫事件と人生格差問題(3)あと小保方さんとかAKBとか

前回までのあらすじ だんだん『黒子のバスケ』脅迫事件と関係なくなってきてるし、そろそろこの話は終わりたいのだが、前回までのあらすじ。 一昨日のエントリー(幸せの配り方〜『黒子のバスケ』脅迫事件と人生格差問題(1)) では、「カネ」「地位」「オ…

幸せの互換性〜『黒子のバスケ』脅迫事件と人生格差問題(2)

前回のおさらい 昨日のエントリー(幸せの配り方〜『黒子のバスケ』脅迫事件と人生格差問題)では、「「カネ」「地位」「オンナ」「名誉」といったそれぞれの領域において、個別に格差を是正しなくても、それらのゲームが別々に行われて、こっちのゲームで勝…

幸せの配り方〜『黒子のバスケ』脅迫事件と人生格差問題(1)

「人生格差犯罪」という予言 先日公開された『黒子のバスケ』脅迫事件(Wikipedia)被告人の手記は、そのショッキングな内容と、筆者の文章力によって、特にネット上では話題になった。 「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人意見陳述全文公開1 「黒子のバスケ」…

【速報】竹島は二つあった!などソウルに2年住んでた僕の韓国関連エントリーまとめ

現在おもに、はてなブックマーク経由で1000人単位で人が流れ込んできているので、これを機会に、過去に書いた韓国関連エントリーをまとめておこうと思いました。 ホットエントリー入りしたのは「嫌韓の情報ソースは韓国の新聞の日本語版サイトという皮肉」と…

生き方の問題としての「ガラケーかスマホか」

前回に引き続き「生き方の問題」について考えてみる。 本当は、「ずーーーっと童貞の人は風俗に行って童貞を捨てるべきなのか」という問題について考えようかと思ったのだが、そんなことばかり書いていると、僕がやっている哲学というのは、そういうことを考…

生き方の問題について議論することは可能だろうか

世の中には「生き方の問題」というものがあり、それについては議論することが難しい。 例えば、「女性は自立して生きるべきだ」という意見と、「女性は家庭に入って子供を産み育てるべきだ」という意見が対立しているとする。 この問題に当事者性を持たない…

韓国の新聞を読んだら韓国が分かるか〜黒田勝弘『韓国 反日感情の正体』

右派系新聞である産経の記者で、韓国についてあれこれ本を書いているジャーナリストなんて「どうせ嫌韓をバラ播いているんだろ」と、わりとガチに左翼だったかつての僕なら手に取ろうともしなかったはずだが、いまだ掲げ続ける左翼の看板もボロボロになって…

嫌韓の情報ソースは韓国の新聞の日本語版サイトという皮肉

現在のマスメディアにおける嫌韓ブームを引っ張っている書き手に室谷克実という人がいる。去年『悪韓論』と『呆韓論』という新書を出して、何十万部というベストセラーになった人だ。 駅のキヨスクなどで、嫌韓の見出しを大々的にぶら下げている「夕刊フジ」…

優しい男の男尊女卑〜STAP細胞・小保方さん騒動を考える

STAP細胞の小保方さんについて、岡田斗司夫さんがこんなことを言っていた。少し長いけどコピペします。 小保方さんについてアレコレ言ってる人の「言いぐさ」はみっともないと思います。 専門家であれ、マスコミの偉い人であれ、同じです。 フィギュアスケー…

ネットの嫌韓を後追いするマスメディア

いわゆる「嫌韓」問題については、僕もいろいろと思うところがあるわけだけど、ここ一年ぐらいの嫌韓感情の特徴は、それがネットからマスメディアへと溢れだしたことだろう。 韓国への批判・悪口・イチャモンというものは、一〇年前からネットではありふれて…

誰もが何者でもないが何にでもなれる時代

もっとブログの更新頻度を増やしたい……と何度か言っているのだが、全然そうならない。これからは、近況報告や、思いつきのようなメモも、気軽にちょくちょく書いていこうと思う……ということも前に書いたことがある気がするのだが。 四月から千葉県にある体育…

「アメトーーク!」と僕らの時代

「アメトーーク!」が好きで毎週見ている、という話をすると、「ああ、お笑いが好きなんですねー」と言われるのだが、別にそんなにお笑いが好きというわけではなく、ただ「アメトーーク!」という番組が好きなのである。 そもそも最近はあまりテレビを見てお…

哲学は世の中に必要か、哲学は社会の役に立つか

大学で勉強したことは、社会に出てから役に立たない、という意見がある。 確かに、例えば大学で西洋史を専門的に勉強しても、西洋史学者を目指さないならば、そこで勉強したことは、将来の飯のタネにはならないだろう。 まあ、文学部に属しているような学科…